魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
8.残酷な事実



「シズカさん、カナさんの監視士の火野です。入ります」



 火野さんはノックをして、病室へと足を踏み入れた。

 わたしもリヒトくんも、それに続く。



「ああ、火野さん。お手数をおかけして申し訳ありません」



 ……っ、お母さんの声だ。

 目が開いていると、ちゃんと生きているって感じがする。

 懐かしいのと、安心したので思わず涙が出そうになった。

 ベッドで上半身を起き上がらせた状態で、
 お母さんはわたしたちに対応してくれた。



「体調はどうですか?」

「ええ。倒れた時はめまいがひどかったんですが、今はなんとか……。点滴もしてますしね」

「そうですか。今後のご予定は?」

「今日一日入院して、すぐ退院できるそうです」

「大事にならなかったようで、なによりです」

「はい、ご心配をおかけしました」



 火野さんとお母さんが会話をしている間、
 わたしはそわそわしていた。

 お母さん、さすがにわたしのこと、わかるよね?

 三年間離れてたけど、髪型とか同じだし。

 背は伸びたけど、基本的に変わってないと思うんだけどな。



「魔女のことでお世話になっているのにもかかわらず、
わたしのことまで……。
本当に、本当に申し訳ございません」



 そう言って、頭を下げるお母さんに、違和感を覚えた。
 
 『魔女』のことで。
 
 今、お母さん、『カナ』じゃなくて、魔女って言ったよね。



「いえ。仕事ですから」


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