魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
さらりと流す火野さん。
ここまでで、お母さんはわたしの顔を一度も見ていない。
「さて、シズカさん。
あなたには、この少年の、
『教育』に協力していただきたい。
それは、魔女の生みの親である、あなたの義務ですので」
唐突に火野さんはそんなことを言い出した。
「教育……」
お母さんは、ここで初めてわたしとリヒトくんの方を見た。
なにか、おそろしいものを見るかのように。
火野さんは、リヒトくんをすっと指さす。
「さて、教えてください。
リヒトくん、アナタはカナさんの『何』でしたっけ?」
火野さんは淡々とした声でたずねる。
リヒトくんは、嫌そうな顔をした。
「自己紹介は自分でするから、いいっすよ。
えーと、カナさんの母さん。
初めまして。
おれ、リヒトって言います。カナさんの友だちです」
「とも、だち?」
お母さんは壊れたロボットのように、
ぎこちなくリヒトくんの言葉を繰り返した。
「そうそう! ホラ、証拠の超仲良し写真! 見てみて~」
え? 写真⁉
そんなの、いつの間に撮ったの?
しかも、超仲良しとか、どういうこと⁉
お母さんに近づき、リヒトくんは、ずいっとスマホをつきだした。
「これは……」
お母さんの目が見開かれる。
リヒトくんは満足げにうなずいて、スマホをポケットにしまった。
いったい、どんな写真だったんだろう?
そう思ったのも、つかの間だった。