魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう

 わなわなと体を震わせて、
 お母さんはぎろりとわたしをにらみつけた。



「この、恥知らず!」



 ぴしゃん、と雷のなったようなお母さんの怒声が響きわたる。



「おまえは、おまえは……。
わたしとあの人の幸せをうばっただけでなく、
こんな子まで
魔女の仲間に引きずりこもうとしているの⁉」



 おかあ、さん?



「ああ、信じられない。
わたしは、この三年間、おまえをずっと憎んでた!
おまえはずっと、わたしを苦しめていたんだ! 
それなのに、魔女のおまえに友だち? 
ふざけるな!」



 口の端から泡を飛ばして、お母さんは叫び続ける。

 こんなに憎しみをあらわにした表情、初めて見た。



「友だちなんて、魔女に必要ないもの! 
魔女は勉学に打ち込み、その力をお国のために使うのが義務でしょうが! 
そんなことも忘れてしまったの⁉」



 わたしはあわてて首を横に振る。

 忘れてない、忘れてないよ、お母さん。

 だから、怒らないで。

 わたしが、全部悪いのはわかったから。



「いい? 
魔女のおまえは、一生幸せになれない! 
いや、幸せになることなんて、許されないんだ。
わたしが許さない! 
それを忘れるな!」



 わたしはもう、ガクガクとうなずくしかなかった。

 呪いのように、お母さんの言葉がぎゅう、と心をしめあげる。



『魔女は、一生、幸せになれない。わたしが許さない』



 ひゅ、と息がつまる。

 ひゅ、ひゅーっと息が上がっていく。
< 43 / 100 >

この作品をシェア

pagetop