魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう

 でも、佐野くんはそんなわたしにかまわず話を続ける。



「きみが曲づくりしてるのは、リヒトから聞いてる。
シンガールのミミの扱いがうまくて、
まるで本当の人間みたいに
しゃべらせることができるって言ってたから」



 えっ……、リヒトくん、そんなことを佐野くんに話してたの?

 その疑問が顔に出てたのか、
「おれも、曲作りが趣味なんだよ。
 それで、シンガールの話題になった時に話したんだ」
 と佐野くんは説明してくれた。

 そういえば、初めてリヒトくんに会った時はミミがきっかけだった。

 すぐ前では、お母さんの病室でミミにしゃべってもらったっけ。



「……あのさ、もしかして、リヒトを利用しようとしてない?」



 えっ。

 厳しい目で、佐野くんはわたしを見ていた。



「リヒトはさ、優しいよ。魔女であるきみにも。
だから、曲をリヒトに歌ってもらおうなんて、考えてないよね?」



 そんな……!

 あわててわたしは指でバツ印をつくって、佐野くんに突き付けた。



「……ならいいけどさ」



 わたしはうなずく。

 佐野くんは、そのまま去っていくと思ったけど……。

 きょろきょろと周りを見回している。

 ここは図書室の入り口を過ぎたところにある掲示板だ。

 静かだし、たいていの人は図書室に入っていくしで、
 わたしたち以外は廊下にいない。



「リヒトが、魔女監視庁に目つけられてるってウワサがある」



 こっそりと、佐野くんがつぶやいた。
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