魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
「A組のリヒトさ~、
かっこよくて性格もいいけど、魔女に優しすぎない?」
「わかる~。将来、魔女関係でつかまってそう」
「だから、彼氏候補からははずれるよね。必然的に」
「犯罪者の彼女にはなりたくないもんね」
ドアごしに手洗い場の方で、おしゃべりが聞こえる。
……なんとか、しなくちゃ。
◆◆◆
ここ数日、
わたしは中休みもコッソリ図書準備室にこもることにした。
教室からなかなか距離があるから、
移動に時間がかかって授業にちょっと遅れる時もあるけど、
先生は何も言わない。
リヒトくんとは、ここのところ話してないんだ。
基本、スマホは教室での使用は禁止だけど、
ここでならナイショで使える。
わたしはここで、作曲・作詞活動をしていた。
……愛の歌コンクール。
今は六月のはじめだから、あと二週間で締め切りかー。
いや、今回は出れないよ?
でも、
次回はシンガールの使用がOKされるかもしれないじゃん。
その時のために、曲作りの練習をしとかないと!
テーマは、「愛」。
……愛、かあ。
わたしは、魔女になった時点で、
普通の恋愛はできないってあきらめてる。
魔女が結婚した、なんて話は聞かない。
結婚していた人が魔女になって離婚した、なんて話はたまに聞くけど。
魔女と結婚生活をし続けてる人は、まったくいない。
……でもさ、愛し合って、結婚までした人たちなんだよね?