魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
13.リヒトくんの夢
 こんなに幸せなことが、あってもいいんだろうか?

 早朝と昼休み、放課後の下校時刻ギリギリまでは、
 図書準備室で曲作りの時間になった。

 毎日、わたしとユキちゃん、リヒトくんで、
 いろいろな案を出しあったんだ。

 曲調は明るめがいいか、しっとりした方がいいか。

 曲の速さはどのくらいがいいか。

 どんな「愛」をうたうか。

 家族愛、友愛、恋愛……、人類みんなに対しての愛、もある。

 そこで出た意見をまとめて、わたしは曲作りをした。

 しっとりとした、ゆったりめの曲。
 いわゆるバラードだ。

 つける詩は、恋愛にすることになった。

 ユキちゃんは
 「やはり、一般受けは恋愛が一番かと。がんばってみます」って、
 照れながら言ってくれた。

 そして一週間が経ち……。

 とうとう、今日曲が完成したんだ。



「すごい……、なんていうか、とても心地いいです」

「耳に残るフレーズだな。いい曲じゃん」



 ユキちゃんとリヒトくんが、
 それぞれわたしの曲の感想を述べてくれる。

 こんな風に、人に曲を聞かせたのは初めてだ。

 生で聞ける感想が、こんなにうれしいものだなんて。



「締切まであと一週間……、がんばりましたね、カナさん。
 あとは、わたしが詩をつけます」



 ユキちゃんはイヤホンをして、集中して曲を聴き始めた。

 わたしはひとまずほっとする。

 曲を、書き上げたんだ。



「お疲れ、カナ」


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