魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
混乱してるわたしをよそに、リヒトくんが口を開いた。
「娯楽の少ない宇土島からこっちに出てきて、
本物の魔女を見て……。
おれ、思ったんだ。
魔女にうんと優しくしてから突き放せば……、
面白いものが、見れるんじゃないかって」
イヤだ。聞きたくない。
リヒトくんは。うっすらと笑みを浮かべている。
その笑みが、とてもおそろしい。
「そこから、いろいろ計画してさ。
愛の歌コンクールに魔女を参加させて、
曲作りさせた後、どうしよっかなーって考えてたんだ。
これはお芝居でしたっていう、
パンチのある暴露をしたいよなって」
ウソだ。ウソ、ウソ。
これは、ウソ。
「ユキにその話をしたら、ちょうどいい方法があるって。
そこで、ユキは自分が特別職員だって明かしてくれたんだ。
それで、こういう場をつくってもらったワケ。
火野さんのとこにおれの音声を匿名で情報提供したのは、ユキだよ」
そん、な。
がん、と頭を殴られたような、衝撃。
「ごめんなさいねぇ。火野監視士。無駄足にしちゃって」
「いえ。仕事ですので」
「でも、おかげでいい魔女の表情が見れました。
必死になって……、ふふ、バカみたいですね」
ユキちゃんと火野さんが、何を言っているかもよくわからない。
ただ、今のこの状況を否定したくて、わたしはすがるようにリヒトくんを見つめた。
リヒトくんは、今度は顔をそむけなかった。