魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
 
 言い訳にしかならないけれど、
 おれがスパイだとバレたら、つかまったら、
 目的が果たせなくなるかもしれない。

 だから、おれは……、
 おまえを、裏切って、あの芝居を仕掛けたんだ。

 おれたちの、目的を果たすために。



 ……目的が、何かって?



 カナ、よく聞いてくれ。

 おれたちの目的は、この国の開国と、魔女制度の廃止だ。

 おれは、正直、上から目線でこの目的を果たそうとしていた。

 鎖国して、とじこもったカタイ頭のやつらと、おかしな習慣。

 それを、ぶっ壊して、もっといい方に発展させてやるって。



 でも……、カナに、出会えた。




 カナに出会って、おれの気持ちは変わったんだ。

 カナとの時間は、おれの宝物だよ。

 しゃべれなくても、いろんな工夫をして、おれに気持ちを伝えてくれたね。

 カナの母さんと、気持ちが通じあった時の涙。

 あんなにキレイな涙を、おれは見たことがない。



【わたしは、リヒトくんを友だちだと思ってる。
友だちを、不幸にしたくない】



 そう、言ってくれたこともあったね。

 それが、おれにとって、
 どんなにうれしいことだったか、想像できる?

 魔女じゃなくて、カナ。

 カナのために、なんとかこの国の魔女制度をなくしたい。

 そう、思うようになった。

 おれの果たしたい目的は……、
 カナのおかげで、血の通った、信念になったんだ。

 だから、キミを裏切ってでも、
 スパイとしてつかまるワケにはいかなかった。

 ああ、未練がましいな。

 でもな、カナ。

 おれは、キミを……。

 キミを、救いたかったんだ。

 だって、おれは……。

 ……いや、なんでもない。

 これで、おれの話は終わりだ。
< 87 / 100 >

この作品をシェア

pagetop