魔女狩りの世界の果てで、あなたと愛を歌おう
19.キセキ 【Side:リヒト】

 いったい、何がおこったのかわからなかった。

 だれかがおれを突き飛ばしたこと。

 その後、轟音とともに何かが落ちてきたこと。

 大量のホコリが舞って、悲鳴も上がって。

 そこで、おれが見たモノは……。



「カナ……?」



 そう、カナが、おれの腰に抱き着いていた。

 カナにタックルされるかたちで、
 二人一緒に吹っ飛んだらしい。

 そのおかげで……、コイツから逃(のが)れられたんだな。

 カナの足ギリギリのところ。

 おれが今まで立っていたところに、スポットライトの残骸が見えた。

 もし、カナが助けてくれなかったら。

 確実に、おれはスポットライトの下敷きになっていた。

 ひゅう、ひゅうとカナは目を閉じて苦しそうに息をしている。

 おれはあわてて、
 いつもポケットに入れていた、カードキーをカナの首輪に読み込ませた。

 このカードキーは、師であるフレイムにわたされたものだ。

 カナの首輪の鍵。

 カナのことを思って、いつも身に着けていてよかった……。

 ピッと音が鳴り、首輪がとれる。

 カナは薄く目を開いた。



「カナ!」



 カナは、おれの頬に手をのばし、ほほ笑んだ。

 よかった、と唇が動く。



「カナ、首輪はおれがはずした。だから、声を出せるよ」



 ゆっくりと、カナが上半身を起こした。

 おれは背を支えて、それを手伝う。



「リヒト、くん」


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