青空の下で君を待つ

君との出逢い

3.君との出逢い
入院して約1週間がたった。
両親は仕事で忙しいのでお見舞いには来ない。毎日退屈だ。
ベッドから起き上がりふと空を見上げるとあの時の空に似ていた。
静かに病室を出て階段を登った。

太陽の眩しい光が屋上の観葉植物達を輝かせている。
私は、手すりに手をかけ、空を見上げた。
この空がいつまでもいつまでも続いて欲しい。
ずっとこの屋上に入れたらなと思った。
「綺麗だね」
ふと、声がしたので横を見ると男の人が空を見上げていた。
制服を着て笑顔で空を眺めている。
その人は私の視線に気づいたのかこちらを見てもう一度微笑んだ。
私は恥ずかしくなり顔を背けて、
「はい。綺麗ですね」と素っ気なく答えてしまった。
すると、その人は私の頬に手を当て顔を覗き込んできた。
彼と目が合った瞬間、私は顔が赤くなった。
その瞬間、彼は笑った。
恐る恐る彼を見ると笑顔で、
「可愛いな」と言った。
私は思わず
「え?」と言ってしまった。
そうすると彼は、
「なんでもないよ」と何事も無かったかのように言った。
「君の名前は?」
「橋川姫衣です。」
「可愛い名前だね。俺は、今井漣。」
漣、、。どこかで聞いたことあるような、、。
私は、見慣れない制服姿の彼に
「高校生なんですか?」と尋ねた。
彼は笑顔で、「うん。17歳だよ。姫衣は?」と言った。
私は、「14歳です。」と答えた。
「姫衣は妹みたいだなー。」と言いながら彼は私の頭を撫でた。
「今井さんは、妹がいるんですか?」
不思議そうに私が聞くと彼は軽く笑った。
「今井さんって、なんか変な感じがするから、漣でいいよ。妹は、居ないよ。」
え?もしかして、、、。
今井漣って、、。

3年前。私が11歳の時。人生で最も最悪な事件が起きた。
大好きだった兄が亡くなったのだ。
兄はいつも笑顔で色々な人に勇気や希望を与えていた。
そんな兄の親友が今井漣だった。
兄から彼の写真を見せてもらった時は綺麗なクリーム色の髪色だったことしか覚えていない。
学校でも街中でも兄と漣が歩けばみんな、2人に目を奪われるほどだった。
兄と漣は2人とも同じ学校に通っていて、漣との時間は2年も無いまま、
兄が亡くなった。
もしかして、漣がこの病院に来た理由ってお兄ちゃんと親友だったから?
そんなことを思いながら、漣を見るとまた空を眺めて微笑んでいた。
でも、その瞳はどこか悲しそうな瞳だった。
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