天使とピュアな悪魔の君と。
敬也もこの近くでお昼ご飯を食べていたのだろうか、彼の手には、ウィダーインゼリーが握られていた。
「っていうか、友達欲しいの?」
ぎくっ、と背中を強張らせる。
まさか敬也に聞かれてるなんて、思いもしてなかった……。
こくりと頷くと、敬也は首を傾げた。
「詩って、変なところでシャイになるよな。テレビの中ではあんなに堂々としてんのに」
「うぅ……仕方ないでしょ。仕事なんだもん」
それもそっか?と笑う敬也は、誰とでも仲良くて、明るくて、みんなの人気者。
敬也は普通学科だから、教室の中でどう過ごしているのかは知らないけど、きっと……いや、絶対にクラスの中心で輝いているのだろう。
「敬也しかこうやって話せる友達いなくてさ。挨拶くらいはみんなとするんだけど……」
はぁぁ、とため息をつく。友達って、ここからどうやってもっと仲良くなっていくんだっけ……?
「友達……か」
「へ?なんか言った?」
敬也がなにやらボソッと呟いたけど、小さすぎて私の耳には届かない。
「いーや?なんも言ってない」
「……?」
敬也は、眉を少し下げて私に笑いかけると、飲み干したゼリーのパッケージをぐしゃぐしゃと丸めた。
なんだか、本当に言いたいことをぐっと飲み込んだような、そんな表情。
何か、私に言おうとしてた……?
「ねえ、敬也___」
立ちあがろうとする彼の名前を読んだ時だった。
「えー?いるかなぁ?」
「でもでも、いつも詩ちゃんここでお昼食べてるって噂だよ?」
そんな声が、廊下の奥から聞こえてきた。
その廊下は、普通学科のクラスに繋がる廊下で……。
一瞬で理解した。あぁ、私のことを見に来たんだ……って。