天使とピュアな悪魔の君と。
嫌というわけではない。むしろ、嬉しい気持ちの方が大きい。
でも、こうして外部で一般の方と接触する機会が増えてしまうと、芸能学科の他の生徒にまで迷惑がかかってしまうかもしれないから、友達ではない一般生徒との接触は必要最低限、と、暗黙の了解が広まっている。
そんなこと、普通学科の生徒も知っているはずなのに、こうやって芸能学科の棟の周りで芸能人の生徒を待ち伏せしたりと、行きすぎた行動をする人もいる。
「隠れるぞ、詩」
「う、うん……」
敬也が素早く私の腕を掴むと、体育館の中の倉庫に隠れる。
中は暗くて、ホコリ臭い。
「えー、いないじゃん。やっぱり噂は嘘だってば」
「わかんないでしょ!ほら、体育館の中いるかもしれないし!」
ま、まずい……。
心拍が上がっていくのを感じる。
「音、立てるなよ」
敬也が私の腕を握る力を少しだけ強める。それに敬也は、自分の高い身長で私を隠すように扉に背を向けて立ってくれていた。
「ほらー、いなかったじゃん!」
すぐそばで聞こえた声に、ぴくりと肩が跳ね上がる。
この倉庫の扉一枚を挟んだ奥に……。
「残念だったねー」
「ちょっと期待したのにー」