天使とピュアな悪魔の君と。



「っ、」


無意識に、敬也のワイシャツの裾を握っていた。

おねがい、バレないで……!


「じゃ、戻ろっか」


___次第に遠ざかっていく足音。

緊張の糸がはち切れてしまいそうなくらいのピリついた空気が、一気に緩むのを感じた。


「ふぅ……よかったね敬也___え」


「……こっちあんま見んな」


ゆっくりと息を吐き出して敬也を見上げると、敬也はどうしてか、少し耳を赤く染めてそっぽを向いていた。


「え……敬也、熱でもあるの?」


「ないから」


額に手を置こうとする私の手を大袈裟に避ける。
なにも、そこまでしなくても……。


「俺もう戻るから」

「えっ?あ、え……うん……」


キョロキョロと目を泳がせて倉庫を出ていってしまった敬也に、ただ頷くことしかできず。


「?……変な敬也」


ひとり取り残された体育館の中に、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた___。




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