天使とピュアな悪魔の君と。
「休憩入りまーす!」
スタッフさんがそう言った途端、仕事モードだった現場の雰囲気が、一気に変わる。
「詩ちゃん、いやー、いいのが撮れたよ!」
「本当ですか〜?嬉しいです!」
よかった、と心の中で息をつく。今日も上手くできたみたい。
監督が離れたのを確認した私は、そばにあったパイプ椅子に座ってペットボトルの水を一口飲んだ。
___あっくん、ひとりでちゃんと生きてるかな。
私の家を空ける時間が長すぎて、あっくんは絶対に退屈な時間を過ごしているはずだ。
家の外に出ている感じもないし……。
申し訳ないな……。
こういう時に、スマホで連絡できたりしたらいいんだけど、新しいスマホを買うのもなんだか気が引ける。
どうしようかな……と、ぼんやり考えていたその時だった。
「白川詩って、あの天使って言われてる女優の?」
「あー!そうそう、その人」
すぐそばにある廊下から、私の名前が聞こえてきて、ぴくりと肩が跳ねた。
私の話題……?
「どこが天使なの?あれ」
「さあ?アタシにはわかんない。でもなぜか人気あるんだよね〜」
「っ、」
どうやら、同じスタジオにいる他のモデルさんたち2人が話しているみたいだった。