緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
「逃げたのか!!」

アレクサンドラは、ベランダの大きな鉢植えの前にしゃがみ込んで、後ろに腕を伸ばして何かをズルズルと引っ張りだした。

「うん、もぉ!!大丈夫だよ。ちゃんと話せばわかってくれるから」

尻尾を引っ張られて出てきたのは、茶色の猫。
おびえているのか、耳はぴったりと伏せられて、体が強張っている。

アレクサンドラは、足を突っ張って固まっている猫を抱っこした。

「ダーリン。この子、リリカだよ」

リリカ・・リリカ・・?

確かアレクサンドラと同じ大魔女で、結婚式の時に来ていた奴だ。
グルシアは、猫に向かって聞いた。

「お前は大魔女だな。どうやって、ここに入って来られた?」

この建物は天界の結界が張り巡らされており、邪悪なものは入ることができない。

「えーーー、アタシが抱っこしてきたけど」

アレクサンドラが代わりに、困った顔をして答えた。

「ダーリン、コワイ顔しないでぇ・・リリカは話をしに来ただけだから」

「害をなすわけではないのか」

ようやくグルシアは、剣を引っ込めた。

「相談があって来ただけだよ」
猫は、ぴょんとアレクサンドラの胸から飛び降りた。

< 14 / 54 >

この作品をシェア

pagetop