緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
結婚式に参列しているのは、地上勤務の天使たちであり、魔界の者は誰もいない。

天界の祝福を受けて、元魔女のアレクサンドラは可愛らしい微笑みを浮かべている。

お姫様のような純白のフワフワのドレスと、マドンナリリーのブーケを手にしてグルシアによりそっている。

道の両脇に参列者が集まり、米や花びらを撒き続けるアーチの中を二人が進んで行く。

ふとアレクサンドラが歩みを止めた。
その視線の先は、正門の脇にある大きな菩提樹。

その老木に寄りかかる、一人の若い女に向けられていた。

その女は、明るい茶色の髪を縦ロールに波を打たせて、華やかな整形風美人と言える。

紅の少しぽってりとした唇、茶色の毛皮のコート。

豊満な胸を強調するために胸元は大きくV字に開き、太ももまでスリットの入った黒のセクシーなドレス。
細く高いピンヒールの靴。

紅い唇から、煙草の煙がふぃーーと吐き出された。

その女の視線もアレクサンドラに向けられた。

二人の視線が交錯し、お互い意味ありげなまなざしを交わした。

「どうした?」
グルシアが心配げに、身をかがめてアレクサンドラを覗き込むと

「いえ、なんでもない・・・けど」
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