緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
そう言うと、アレクサンドラはいきなり自分の手のブーケを、力いっぱい大空に投げ上げた。

キャァアアーーー

参列の女性たちの歓声、それぞれに、つかもうとする手が上がる。
白いリボンが細い雲のようにたなびき、ブーケはとんでもなく遠い所に投げられていた。

なんと、木の寄りかかっていた女の腕に、ポスッとブーケが収まったのだ。

女は目を白黒させてひどく慌てた様子ブーケを手にした。

そして、周囲をキョロキョロ見回して、すぐに木の後ろに回り込み隠れた。

アレクサンドラは、その女がブーケを受け取ったのを見届けると、

「大魔女のリリカが来ていたから、ブーケを投げてあげたよ」

そう言って、かわいらしい微笑みを浮かべて、グルシアを見上げた。

「そうか・・・結界があるから、敷地には入って来られないからな」

グルシアも正門の大きな菩提樹を見たので、アレクサンドラはその手をぎゅっと握った。

グルシアは大天使の騎士団長であり、その手先からは黄金の剣をいつも取り出すことができる。

魔物を一振りで絶つことができる、黄金の剣。

それを出させないように、アレクサンドラは強く指を絡めた。

「うん、リリカは友達だったから・・・来てくれてうれしいよ」
アレクサンドラは小さな声でささやいた。

式が終わり、新郎新婦は教会の正門につけられていた車に乗り込んだ。

この後、近くのホテルで披露宴がある。
二人を見送った参列者たちも、次々と用意された車に乗り込んでいった。
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