緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
手先を中空に上げて四角を描くよう動かすと、スクリーンのような白い空間が出現した。

「まず、このグラフを見ていただきたい。
これは、ニンゲン界に影響を与える者の、種別増減を示しているのですが、
サキュバスが右肩上がりで、上昇している事がおわかりでしょう。

これは需要と供給バランス、つまり、ニンゲンのオトコがサキュバスを求めている現象と言えます」

サリエルは、リリカをチラッと見た。

「サキュバスはコスプレも過激で、バリエーションが豊富です。
アニメや漫画にも数多く取り上げられているので、ビジュアルもいいですね。
それに比べて、魔女は時代遅れでしょう」

サリエルは両手を広げて肩をすくめるように、後ろを振り返り傍聴席の天使たちにアピールをした。

「もはや、魔女は魔界における絶滅危惧種と言えます。
別に封印しなくても、自然消滅するのではないですか?

むしろ今後、保護する対象として魔女を扱うようになるでしょう。
今、天界の我々には、発想の転換を求められているのです」

じじ・・時代遅れ・・絶滅危惧種・・自然消滅・・保護対象・・

リリカは、雄弁に語るサリエルをにらみつけた。

「我々が早急に取り組むべきは、サキュバス対策ではないですか?
このまま魔女対策に取り組むのは、コスパが悪いし、今ここで放置しておいても問題にもならないでしょう」

言い終わると、
サリエルは緋色の衣を翻して自分の席に戻った。

「魔女リリカ殿、特に補足説明がなければ、退出をしてください」

書記役の天使が声をかけた。

「ありがとうございました」

リリカはバックにタブレットをしまい、丁寧に頭を下げて、入って来た扉から出ていった。
< 37 / 54 >

この作品をシェア

pagetop