緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ

緋色の天使の下心



終わった・・・
リリカは足を引きずるようにして、エレベーターホールにたどりついた。

「リリカ、どうだった?」

廊下で待っていたアレクサンドラが、リリカに抱きついた。

「うん、タブレットが動かなくて。ちゃんと言えなくて」

リリカは緊張が解けたのか、疲れが声ににじんでいる。

「アレクサンドラ、一緒に帰る?」

「ゴメン、ダーリンを待っているから、先に帰っていいよ」

アレクサンドラはそう言って、下階に行くエレベーターボタンを押した。

「1階で降りれば、ニンゲン界にいく通りに出られるよ」

リリカは力なくうなずいた。

「わかった。んじゃ、バイバイ、またね」
そう言ってエレベーターに乗り込み、なかば扉が閉じられる瞬間だった。

強引に緋色の翼が飛び込んで来たので、リリカはすぐに隅に飛びのいた。

ズンーーー

エレベーターの扉が完全に閉まり、振動と共に下がり始めた。

サリエルが腕を組んで壁に寄りかかり、リリカに微笑んだ。

「ああ、お疲れさま。僕も急ぎでね、ニンゲン界に戻る用事があって」

リリカは黙って、軽く会釈をした。

「もし良ければ、送っていくけど?」
サリエルは、ポケットから車の鍵を取り出した。

「いえ、大丈夫です!!」
リリカは壁に体をぴったりつけて、首を横に振った。

時代遅れ・・絶滅危惧種・・自然消滅・・

サリエルの発言が、頭の中で反芻(はんすう)する。

ビシッ

何かのスパーク音が響いた。

体がよろけるほどの大きな振動が起こり、ガタンと音を立ててエレベーターが止まった。

「え・・何??!!」

リリカが胸にバックを抱いて、うろたえる声をだした。

一瞬、真っ暗になり、すぐに照明が灯ったがうす暗い。

「緊急停止で、非常用ライトがついたんだ」

サリエルが上を指さして、説明した。

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