緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
サリエルは、奥歯に何かが挟まったように

「つまりだ・・君に触れたいというか、キスしたいという気持ちが沸き起こった」

「にゃにゃ・・キスって、それって、アンタの仮徴(かりしるし)がつくことじゃん」

リリカが肩をすくめて、ぴったりと壁に張り付いた。

目を丸くしているリリカに、サリエルは哲学を語るかのように

「僕は知りたい。君とのキスがどのようなものか。
だから、君から僕にキスをしてくれればいい。
それが、見返り報酬。
それに、ここなら猫の姿になっても逃げられないしね」

こいつは変態天使だ・・変に話をこじらせると面倒くさい。

「わかった・・よ」

リリカは体を傾けて、サリエルの頬っぺたに少しだけ唇を触れた。

その瞬間、リリカの両手首がつかまれ、座ったままでのカベドン状態になった。

「そんな子供だましはダメだよ!ベロチューに決まっているでしょぉ?」

近い・・・ってば!
圧が強いってば!

サリエルの瞳は炭の熾火のように、ほの暗く紅く燃えているようだ。

「僕の徴(しるし)がつけば、他のオトコとはできなくなるけど・・それでもいいね?」

その声は催眠術師のように、耳元で深く響いた。

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