緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
「あの・・あの・・それってアンタとするって?こと・・」

リリカの目が振り子のように、揺れ動く。

オトコ美人、ましてや大天使にここまで迫られた体験は、リリカもない。

「うーーーんと・・・だったら」

リリカは、素早くサリエルの緋色の翼の羽を一本抜いた。

「えっ?」
サリエルは一瞬、不意をつかれた顔をした。

「するなら、証拠にこれもらっておくから。
もしアンタが何かやらかしたら、この羽を使って呪いをかけてやる」

駆け引きで主導権を握る事、これも魔女の常套手段だ。

サファイアブルーに金の線が入る瞳を細めて、リリカはサリエルの目の前で緋色の羽をクルクルまわした。

「そういうことではなくて・・」

サリエルは先ほどの雄弁さはまったくなく、言葉に詰まっているように見える。

「欲しいのなら、僕の羽なんか・・いくらでもあげるよ」

その瞳はほの暗い熾火のようで、何か思いつめるような口調になった。

「実は・・僕は・・魔女に徴を(しるし)をつけたことが・・まだない」

「ぐげっ!!」

カエルがつぶされたような声が出たので、リリカは口を押えた。

こいつって、こじらせ童貞って奴じゃん!

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