緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
「目ぐらいつぶれよ。恥ずいじゃないか。
それに、本当に好きな奴となら、ヘタクソとかかんけーねぇよ」

「うん・・」

サリエルは、幼子のように従順に目を閉じた。

リリカは軽くサリエルの両頬に手を当てて、唇に触れた。

強いミントの香りが鼻に抜け、サリエルの口にキャンディが転がされた。

唇が離れると、サリエルはうっとりとした目で、キャンディをなめている。

「甘いね・・」

「飴だからね。当たり前だし」

リリカは、一仕事終えたような声をだした。

「今度は、僕から君に渡してもいい?」

「そしたら、これ、動かせよ。約束だぞ」

まさかエレベーターの中で、徴(しるし)をつける行為までは、いかないだろうが。

「うん。リリカちゃんも目をつぶって?」

リリカは覚悟して目を閉じた。

ここから脱出するために、手段を選んでいる暇はない。

飴を渡すゲームなんて、酒場ではよくやる遊びにすぎない。そう自分に言い聞かせる。

サリエルの指先が、リリカの両頬に触れた。

それはキャンディではなく、熱い舌がねじ込まれると同時に、強く吸われる感触。

こいつ・・・何気にうまいじゃんか・・・

< 46 / 54 >

この作品をシェア

pagetop