緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ

大天使のお持ち帰り



エレベーターが動き出し、1階で止まった。

グルシアとアレクサンドラが並んで、扉が開くのを待っていた。

扉が開くと、サリエルは茶色の猫を片手で胸に抱き、肩にはリリカのバックをかけ、パンプスをもう片方の手に下げて出て来た

「おんや?カワイイ猫ちゃんだね。サリエル」

アレクサンドラは、目を細めて興味深げに聞いた。

「ああ、僕が飼おうと思って。今日は急ぎなので、それでは失礼」

薔薇色の頬をしたサリエルは、速足でそのまま立ち去った。

グルシアとアレクサンドラは、お互いの顔を見合わした。

「むーーー、お持ち帰り、決定!か?」

アレクサンドラは、ポンと拳を手の平で打つと

「顔にひっかき傷がないから、同意したってことだよね!」

「なるほど」

グルシアが答える前に、アレクサンドラは窓に駆け寄った。

ニンゲン界に降りる道、そこを赤のオープンタイプのスポーツカーが、猛スピードで走って行くのが見える。

サリエルの車だ。

助手席には、リリカが風に乱れる髪の毛を手で押さえて座っている。

「サリエルは、ニンゲン界に瞬間移動できるのに、なんで車で帰るんだ?」

グルシアが、素朴な疑問を呈すると

「リリカとドライブデートをしたかったんじゃない?
この道、少し先に行ったところに、ヤドリギがあるし」

「なるほど、ヤドリギか・・」

天界の恋人たちは、ヤドリギの下で永遠の愛を誓い、キスをするのが慣習だ。

アレクサンドラは、車がミニカーの大きさになるまで見送った。
< 48 / 54 >

この作品をシェア

pagetop