緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
大天使のお持ち帰り
エレベーターが動き出し、1階で止まった。
グルシアとアレクサンドラが並んで、扉が開くのを待っていた。
扉が開くと、サリエルは茶色の猫を片手で胸に抱き、肩にはリリカのバックをかけ、パンプスをもう片方の手に下げて出て来た
「おんや?カワイイ猫ちゃんだね。サリエル」
アレクサンドラは、目を細めて興味深げに聞いた。
「ああ、僕が飼おうと思って。今日は急ぎなので、それでは失礼」
薔薇色の頬をしたサリエルは、速足でそのまま立ち去った。
グルシアとアレクサンドラは、お互いの顔を見合わした。
「むーーー、お持ち帰り、決定!か?」
アレクサンドラは、ポンと拳を手の平で打つと
「顔にひっかき傷がないから、同意したってことだよね!」
「なるほど」
グルシアが答える前に、アレクサンドラは窓に駆け寄った。
ニンゲン界に降りる道、そこを赤のオープンタイプのスポーツカーが、猛スピードで走って行くのが見える。
サリエルの車だ。
助手席には、リリカが風に乱れる髪の毛を手で押さえて座っている。
「サリエルは、ニンゲン界に瞬間移動できるのに、なんで車で帰るんだ?」
グルシアが、素朴な疑問を呈すると
「リリカとドライブデートをしたかったんじゃない?
この道、少し先に行ったところに、ヤドリギがあるし」
「なるほど、ヤドリギか・・」
天界の恋人たちは、ヤドリギの下で永遠の愛を誓い、キスをするのが慣習だ。
アレクサンドラは、車がミニカーの大きさになるまで見送った。