緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
が、細いピンヒールが、菩提樹の太く張っている根の間にはさまってしまい
粘着テープにからめとられた虫のように身動きが取れない。

それでも逃れようと、力ませに上体を傾けたその時。
片足の靴が脱げて、サリエルと名乗った天使の胸にブーケと一緒に倒れ込んだ。

その肩越し、緋色の翼が見える。

こいつは・・大天使で・・緋色の翼!!
天使でも上位クラス、少なくとも、アレクサンドラの旦那とほぼ同じランクの奴だ。

「君は・・・ええと、大魔女のリリカちゃんだね。君、シナモンの匂いがする」
サリエルが耳元で、確認するように言った。

「てめぇ、離せよ!!」
リリカは大声を上げて、体をひねるようにもがくと、

「はい、わかりました」
サリエルはつかんだ腕を、ひょいと離した。

その結果、リリカがバランスを崩して、ブーケの上に尻もちをついた。

「なに、しやがるんだよぉ・・この、クソ天使!!」

「離せ・・というから離しただけですが・・」
サリエルはこれは心外とばかりに、座り込んでいるリリカのそばにしゃがんだ。

「あーーあ、せっかくのブーケが台無しだ」
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