緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
そのまま、音を立てないように、裸足でバスルームに向かった。

海に突き出た半島、その先端にある小さなコテージ。

サリエルは<隠れ家>と言っていた。
ニンゲンも魔物も天使も、ここにはほとんど来ないらしい。

この場所はサリエルの個人図書館らしく、本棚に入りきらない本が塔のように何百冊も積んである。

波音だけが響く、本当に静かな場所だ。

リリカはシャワーのコックをひねった。

昨夜の愛は・・
いや、徴(しるし)をつける行為に及んだのは、アレクサンドラの仕組んだ呪いが原因と言うべきか。

サリエルは・・それを知ったら、どんな顔をするのだろうか。

「愛している」
そう言ったサリエルは、真剣だったと思う。

リリカはバスタブから出ると、洗面所の鏡の前に座った。

「ああーー」

首筋から胸元・・緋色の徴(しるし)がたくさんついている。

昨夜の熱がいかに激しかったか・・

これって消すの、結構手間なんだよな。
コンシーラーとかあれば、ごまかせるのだけれども

ドライヤーで髪を乾かして、化粧品ポーチに入っているファンデーションで丁寧に隠す作業を始めた。

リリカは経験上、よく理解をしていた。
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