緋色の徴(しるし)・改訂版・リリカとサリエル 魔法の恋の行方シリーズ
出会いがあれば、必ず別れがある。

特に魔女は・・すぐに別れるのがセオリーだ。

魔女にとって、ニンゲンのオトコと体の関係を持つ事は、「狩り」でしかない。

そして、ひと時の快楽をむさぼって、捨てるだけだ。

徴を消し終わると、リリカは口紅をぐいっとひいた。

この先、二度と会うことはないだろうし。

サリエルが、<自分は天使として、徴(しるし)をつける仕事をした>・・
そう割り切れば別に問題はない。

身支度を整え、バックから小さな香水瓶を取り出した。

自分のシナモンの臭いを、バニラの匂いにうまく変えてくれる。
まんべんなくスプレーをすれば完璧だ。

リリカはバスルームを出て、寝室を覗いた。

そこは・・誰もいない。
ベッドのシーツはぐしゃぐしゃで、緋色の羽も散らばったままだ。

「リリカちゃん、こっち、キッチンだよ」

サリエルがワイシャツをはおり、腰にはバスタオルを巻いたまま、開いているドアの向こうから手招きをした。

「コーヒー入れたから、おいで」

リリカは、そのまま廊下で立ち止まった。
玄関ドアはすぐ脇にある。

「あの・・サリエル、これはね、呪いなんだよ」

「呪いって・・何?」
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