梅雨夜景、いとめでたし
「南の鳥居から見る神社が好き。茅の輪越しに見る光が灯る境内が幻想的で凄く綺麗。
息を飲むほど綺麗で、始めて見た時、心が洗われるってこういう気持ちを言うんだなって思った。」


彼女は外を眺めつつ、記憶の中の景色を見ているようだった。


「ああー、これぞ、いとめでたしってやつだね。」

「いとめでたし、か…
なあ、病気が治って元気になったら、見に行かないか?」

「良いねー、いつか見に行こう。約束ね。」

「あー、約束だ。」


約束と言ったけれど、この約束が果たされるのかは分からない。

けれど、この約束が環奈の生きる糧の一つになれれば良い。

一緒に生きられなくても、生きていてほしい。

窓を見れば、降りだした雨が線を描いている。

もう直ぐ梅雨が来る。

彼女の好きな梅雨の雨がやって来る。








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