冷酷弁護士と契約結婚
ホテルからタクシーで10分の所にあるマンションへ戻ると、スマホにはメッセージありを知らせる光が点滅している。

「あっ、親父?遅くなってごめん。今帰ってきた」

「おお、涼介すまないね。実はお前に頼みがあるのだが......」

「まさか、また見合いじゃないだろうな!」

「そうじゃない、お前が結婚に興味がないこと知っているから、すべて私とじいちゃんの方で断っている。

実は仕事の話なのだが、お前に扱ってもらいたい案件がある。

私が顧問している伊乃国屋《いのくにや》コーポレーションにいた子の案件だが、今伊乃国屋の企業案件で忙しくてな」

「もしかしてクライアントは女性?」

「ああ、そうだ、彼女は伊乃国屋で秘書をしていた子で、ストーカー被害にあっていてな。

警察にも相談したらしいが......

知っての通り、身体的危害を受けないと奴らは動かんからな。どうだ、引き受けてくれないだろうか?」

俺は基本的に女性のクライアントは受け付けたいない。以前離婚案件の女性クライアントが、

離婚成立前に言い寄ってきたことがあったからだ。しかし親父がわざわざ電話で頼み事するなんて。

「いいよ、引き受ける。ただし俺のやり方で仕事するよ。親父も知っていると思うが、

女に対して冷たいって言われているけれど...それでいいなら」

「ああ、それで構わない。お前がきちんと仕事をするのは分かっているしな。

彼女には私から連絡をしておく。

今から彼女のファイルを送るから。涼介、力になってあげてくれ」

親父から送られてきたファイルに目を通す。


吉岡鈴音:よしおかすずね   20歳

今年3月聖敬短期大学卒業後、4月伊乃国屋コーポレーション入社、秘書課配属

8月頃から会社へ彼女宛の手紙が届き始める *手紙のコピーあり

11月警察に相談、後日伊乃国屋コーポレーション顧問弁護士である伊集院圭介に相談

11月末伊乃国屋コーポレーション退職

12月1日時点で接近なし、自宅アパートに被害なし


ファイルと彼女へ送られてきた手紙の数々を読み終え、長いため息をつく。この分では自宅が知られるのも時間の問題だろう。

早急に彼女と会って話さなければ。
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