冷酷弁護士と契約結婚
涼介サイド
契約結婚を提案したものの、最初は一抹の不安もあった。いくら女と見合い避けとは言え、鈴音を自分のテリトリーに入れるとこに。

どうせコイツも施栓他の女たちと一緒。

いつ本性を現すかと様子を見ていても、一向に変化がなかった。

明らかに俺に取り入ろうとしていた女たちとは違う。

生活費用としてブラックカードを渡したが、ブランド品やジュエリーを買いあさって散財している様子もなく、

食費と日用品にしか使われていない。

買い物もマンション下の高級スーパーでなく、

少し歩いた所にある庶民的なスーパーを利用している。

「あっちのスーパーの方が少し経済的だし、品数も多いので」

今まで彼女から何かをねだられたことはたった1回だけ。

「このお部屋にお花を飾りたいのですが......あと観葉植物もいいですか?」

先日会社からの帰り道、表通りに可愛らしいフラワーショップを見つけたと嬉しそうに話してくれた。






最近では俯くことも少なく、よく笑顔を見せてくれるし、よく話をするようにもなって彼女自身の事も少しずつ分かってきた。

彼女は幼いことから異性から嫌な思いをさせられ、男性に対して不信感があるらしい。

その都度加害者側から『お前が誘った』 『お前のせいだ』などと言われ続けた。

だからなのだろ、極力男性との接触を避け、

今まで恋人もいなかったし手をつないだことすらもなかった。

やはり契約にスキンシップと手をつないで寝ることを入れて正解だ。まぁ、少しずつ俺に触れられることに慣れてきてはいるが。






彼女はもっと自分が魅力的であることを自覚した方がいい。

先日伊集院総合法律事務所創立記念パーティーで、

初めて彼女を妻として正式に披露したが、

そこにいた男たちからの熱い視線に全く気が付いていない......無自覚とは恐ろしい。

俺のものだと彼女の腰に腕を回し、人々に自分の妻だと触れ回った。





男慣れしていない彼女のためにスキンシップを始めたが、いつの間にか俺の方がもっと鈴音を欲している。

彼女をもっと甘やかしたい、もっと触れたい。いつも側にいてあの無邪気な笑顔を見ていたい。鈴のなるような声でもっと

俺の名前を呼んで欲しい。あの甘そうな唇を味わいたい。彼女の白い肌を俺の印で埋め尽くしたい。

俺の下で彼女を乱れさせ、早く自分のものにしてしまいたい......






最近では以前のようにバーへ寄ることもなくなった。そんな俺を不審に思った幼馴染で悪友たち、

西園寺雅《さいおんじみやび》、九条仁《くじょうじん》、近衛彰人《このえあきと》が

頻繁に連絡をくれるようになったので、唯一契約結婚のことをこの三人にうちあけた。反対もされなかったが賛成もされない。

ただ三人そろって俺の表情がやわらかくなったと言っている。

この三人と会うと楽しいが、鈴音の元へ戻りたい気持ちが勝る。今では仕事終わりに真っすぐ彼女の待つ家へ帰っている。

玄関を開けると、いつも彼女が笑顔で出迎えてくれる。家の中は美味しそうな匂いがする。料理好きもあってか、彼女が作るものは

なんでも旨い。俺のスケジュールに合わせて持たせてくれる弁当が、最近の密かな楽しみだ。






女に対して冷酷と言われる俺だが、もう認めざるを得ない。俺は鈴音を愛してる。人生で初めて女を愛おしく守りたいと思う。

GPSネックレスは万が一のため、鈴音を失いたくない。

もしストーカーの件が解決し彼女が離婚を望んだら、俺は鈴音を手放すことができるだろうか?
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