0.0001%の恋
プロジェクトの定例会議のため、会議室のあるフロアに足を運んだ。最近毎日のように深山さんのいるシステム部に通っていたから、なんだか凄く久し振りな気がしてしまう。
私に関する噂には深山さんのことも含まれていたので、しばらくの間マクロの勉強会はお休みすることになった。
あんな噂が立っているのに、渦中の人と平然と顔を合わせられる程私の神経は図太くないのだ。更なる燃料の投下は極力防ぎたい。
仕事だから仕方がないとはいえ、こうして会議で顔を合わすのも憂鬱である。定例会議には田中さんもいるのだから尚更だ。
まあ、外部の人間である田中さんが噂を知ってるとは考えにくいので、それがせめてもの救いだろう。
無人の会議室に荷物を置き、お茶の準備をするため給湯室に向かった。
「亜子!亜子!」
その途中で誰かに小声で呼び止められた。社内で私を呼び捨てにする人なんて家族以外にいるはずない。他人の振りをする約束はどうなってるの!?
「常務」
役員室から顔をのぞかせていた兄を、慌てて部屋に押し込み、室内に誰もいないことを確認する。
「ちょっと!誰かに見られたらどうするの!?会社では話しかけない約束でしょ!」
「今朝お前の噂を耳にして、どうしても直接確認したかったんだ。あまりにも酷い内容だったから、お前が直接嫌がらせを受けてるんじゃないかと心配で‥‥亜子、本当に大丈夫か?」
役員にまで噂が届くって‥‥まじか。
「噂になってるだけで実害は何もないから大丈夫、心配しないで。仕事にも支障はないし、本当大丈夫だから」
「なんであんな噂が立ったんだ?亜子‥‥お前まさか、二股なんて‥‥」
「かけてないよ!田中さんが私なんて相手にすると思う?深山さんだって、勉強教えてもらってるからたまに食事に行ったりはするけど、本当にそれだけの関係だよ」
「まあ、田中に関しては仕事がしづらくなるようなことをするとは思えないからわからなくもないが‥‥深山君はどうなんだ?もう子供じゃないんだから、別に俺にまで隠す必要はないんだぞ?いい加減な付き合いじゃないなら、俺は反対なんてしないし応援してもいいと思ってる」
応援て‥‥一体何をするつもりなんだ?もし恋人ができても、兄には黙っていた方がいいかもしれない。
「深山さんとは本当に何もない。付き合ってもないし、特別な感情はこれっぽっちもない。私はもう子供じゃないんでしょ?お願いだから余計なことはしないでね?」
そう言い捨てて部屋から出ようとする私を兄が引き止めた。
「亜子、心配してるのは本当だ。だから困ったことがあったら、すぐ俺に相談してくれよ?」
「わかった、ありがとう」
掴まれていた腕をそっと外し、すぐ給湯室へ向かう。一体いつになったら元の平穏な生活に戻れるのだろうか‥‥さすがに少ししんどいな。
私に関する噂には深山さんのことも含まれていたので、しばらくの間マクロの勉強会はお休みすることになった。
あんな噂が立っているのに、渦中の人と平然と顔を合わせられる程私の神経は図太くないのだ。更なる燃料の投下は極力防ぎたい。
仕事だから仕方がないとはいえ、こうして会議で顔を合わすのも憂鬱である。定例会議には田中さんもいるのだから尚更だ。
まあ、外部の人間である田中さんが噂を知ってるとは考えにくいので、それがせめてもの救いだろう。
無人の会議室に荷物を置き、お茶の準備をするため給湯室に向かった。
「亜子!亜子!」
その途中で誰かに小声で呼び止められた。社内で私を呼び捨てにする人なんて家族以外にいるはずない。他人の振りをする約束はどうなってるの!?
「常務」
役員室から顔をのぞかせていた兄を、慌てて部屋に押し込み、室内に誰もいないことを確認する。
「ちょっと!誰かに見られたらどうするの!?会社では話しかけない約束でしょ!」
「今朝お前の噂を耳にして、どうしても直接確認したかったんだ。あまりにも酷い内容だったから、お前が直接嫌がらせを受けてるんじゃないかと心配で‥‥亜子、本当に大丈夫か?」
役員にまで噂が届くって‥‥まじか。
「噂になってるだけで実害は何もないから大丈夫、心配しないで。仕事にも支障はないし、本当大丈夫だから」
「なんであんな噂が立ったんだ?亜子‥‥お前まさか、二股なんて‥‥」
「かけてないよ!田中さんが私なんて相手にすると思う?深山さんだって、勉強教えてもらってるからたまに食事に行ったりはするけど、本当にそれだけの関係だよ」
「まあ、田中に関しては仕事がしづらくなるようなことをするとは思えないからわからなくもないが‥‥深山君はどうなんだ?もう子供じゃないんだから、別に俺にまで隠す必要はないんだぞ?いい加減な付き合いじゃないなら、俺は反対なんてしないし応援してもいいと思ってる」
応援て‥‥一体何をするつもりなんだ?もし恋人ができても、兄には黙っていた方がいいかもしれない。
「深山さんとは本当に何もない。付き合ってもないし、特別な感情はこれっぽっちもない。私はもう子供じゃないんでしょ?お願いだから余計なことはしないでね?」
そう言い捨てて部屋から出ようとする私を兄が引き止めた。
「亜子、心配してるのは本当だ。だから困ったことがあったら、すぐ俺に相談してくれよ?」
「わかった、ありがとう」
掴まれていた腕をそっと外し、すぐ給湯室へ向かう。一体いつになったら元の平穏な生活に戻れるのだろうか‥‥さすがに少ししんどいな。