0.0001%の恋
 そろそろ彼女とキスがしたい。

 これまでのデートは外だったので、手を繋いだり肩や腰を抱き寄せたり等のスキンシップにとどめていた。なんとなく人目がある場所でのキスは彼女が嫌がりそうな気がしたのだ。

 彼女も俺に夢中になって欲しいので、キスはしなくともスキンシップでできる限りのことはしていたが‥‥俺は凄くよく耐えていると思う。

 でも、そろそろ彼女とキスがしたいのだ。

「次のデートはうちで一緒に何か手の込んだ料理を作ってみない?亜子ちゃん、何かリクエストとかある?」

「そうですねえ、私は母に料理を教わっているのでレパートリーは和食がメインなんです。だからせっかくなら洋食がいいかな?」

「じゃあ今回は洋食にしよう。でも亜子ちゃんの和食もいつか食べてみたいな」

「なら次は私が作ってご馳走しますね。でも今回は洋食で‥‥何がいいかな?煮込み料理とかなら失敗が少ない?」

 はあああ‥‥俺がキスのためだけに彼女を自宅におびき寄せようとしてるというのに、彼女がかわい過ぎてつらい。

 そして翌週。

 予定通りうちに遊びに来た彼女と、料理をして食事をし、食後はソファーへと移動してお茶を飲みながら、いつものように会話を楽しむ。

 さりげなくスキンシップをしながら、徐々に甘いムードを漂わせ‥‥

「亜子ちゃん‥‥キス‥‥してもいい?」

 耳元でそっと囁くと、彼女が小さく頷いてくれた。

 ガチガチに緊張している様子の彼女をリラックスさせたくて優しく頬を撫でてあげると、彼女はくすぐったそうにして目を細めた。

 その隙に、軽く口の端にキスをする。

 反応がいちいちかわいくて、彼女の様子を伺いながら、軽いキスを繰り返した。

 どうして彼女はこんなにもかわいいんだ‥‥想いが溢れて、思わず彼女を抱きしめる。

 暴走したくなくて、気づかれないように深く息をするも‥‥駄目だ、もう耐えられない。

「お願い、もう少しだけ、キスさせて?」

 彼女の返事を待たずに、俺は貪るようにキスを繰り返した。

 長いこと恋人のいなかった俺にとって、もの凄く久し振りのキスだったのだが‥‥キスとはこんなに気持ちのいいものだっただろうか?危ない薬とか使ったことはもちろんないのだが、多分そんな感じ。頭の中がフワフワして、完全に馬鹿になっていたと思う。

 もっと‥‥もっと‥‥

 どれくらいキスをしていたかわからない。

 でもキスのもっと先まで欲しくなったところで、ようやく脳が再稼働し、俺の体に急ブレーキをかけた。

 しまった!と思った時にはもう遅く、彼女はもうぐずぐずにとろけきっていて‥‥これ、本当に先を望んではいけないのか?っていうレベルの仕上がりだった。

 いや、駄目だ。彼女を外泊させるわけにはいかない。我慢だ。俺、頑張れ。
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