0.0001%の恋

襲撃

 昨日、光希さんとキスしてしまった。

 凄かった‥‥よくわからないけど、多分もの凄かった。最初は恥ずかしかったけど、途中から何も考えられなくなって、気づいたら焦った様子の光希さんにもの凄く謝られていた。

 元々光希さんはスキンシップが多めだなと感じていた。デートでは手を繋いだり肩を抱き寄せられたり‥‥ふとした時に優しく手や顔を撫でられるとゾクゾクしてしまう。そんな時の光希さんの表情はあまりにも妖艶で‥‥とにかく何かとエロいのだ。

 適齢期を迎えている年齢の私だが中身は10代と変わらない。多分光希さんはそれをわかっていて、私にあわせたお付き合いをしてくれているのだろう。

 でもおうちにお呼ばれしたらさすがの私もそれなりに意識してしまう。もしかしたらもしかするかもしれない‥‥そう思って一応万全の準備は整えたつもりだった。

 まあ結果はキス止まりだったわけだが‥‥キスだけなのに、とんでもなく刺激的で‥‥これ‥‥最後までいったらどうなってしまうんだろう?と不安になる。

 キスをしたってことは光希さんに少しは気持ちの変化があったと考えてもいいのだろうか?キスをしてる時、求められていると感じる瞬間はあった気がする。でもそれって、性欲の可能性もあるのか‥‥?

 昨日のことを反芻しつつ、朝イチで配るコーヒーを準備するためマシンのセットをしていたら、給湯室に人が入ってきた。伊東さんか君島さんかな?と思い挨拶しようと振り返ると‥‥そこにいたのは田原さんだった。

「あなた、田中さんとどういう関係なの?」

「え?」

「とぼけてんじゃないわよ!昨日、田中さんのマンションから2人で出てくるところ見たんだから!」

 確かに昨日はキスでヘロヘロになった私を光希さんが車で家のそばまで送ってくれた。でもまさかそれを目撃されるなんて偶然以外ありえないし、そんなの回避しようがない。

「まさか、田中さんと付き合ってるとか言わないわよね?社長の娘だからって調子にのってんじゃないわよ!仕事だけじゃなく田中さんまで私から奪うなんて、絶対に許さない!」

 そう叫びながら田原さんがコーヒーポットを私に向かって投げつけてきた。まだ落とす前なのでただの水だから助かったが、全身びしょ濡れだし結構痛い。よくわからないけど、なんかやばい。でも入り口を塞がれていて逃げられないし、どうしよう‥‥

「あんたのせいで私の人生はもう滅茶苦茶なのよ!自分だけ幸せになろうったってそうはいかないんだから‥‥」

 田原さんがフラフラとシンクに近づいて引き出しの中から小型のナイフを取り出した。

「ちょっと嘘でしょ?田原さん、落ち着いて?一回落ち着いて話しましょう?ね?お願い!」

「おはよーございまーす‥‥って、あれ?田原さん?」

 朝の準備のために伊東さんが現れた。一瞬田原さんの気がそれたが、まだやばいことには変わりがない。伊東さん!やばいから逃げて!そして誰か助けを呼んできて!
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