プロポーズは突然に

平日の朝はどうも苦手。


朝を知らせるアラーム音を手探りに探す私は、慣れた手付きで耳障りなアラーム音を消すと、あと少し、あともう少しだけだとまた夢の中へと戻っていく。



二度寝。


32歳にもなって、一回で起きれないなんて不甲斐ないことだけど、これが事実。



そんな私を見兼ねてか、一緒に同棲している彼氏、五十嵐《いがらし》亮《りょう》が私の許へ来て、いつも優しく起こしてくれる。



「小春、早く起きなー。ご飯、冷めちゃうって」



「……ぅヴぅッ……ぅウ」



彼の声を聞いた私は虫のように蠢《うごめ》き、ゆっくりと背筋を伸ばす。



ほんのり香る彼が作ってくれた朝食の香りが私の鼻を通り抜け、私は甘い蜜に誘われた虫のように勝手に香りがする方へ動き出していた。


酷く浮腫《むく》んだ顔もあちらこちら跳ねている寝癖など気にも留めず、私はいつもの定位置に陣取り、彼が作ってくれた朝食を味わう。


ホント幸せ。


簡単な手作り料理なんだけど、私のために作ってくれることに意味があって、この朝食を食べることが私にとって世界で一番幸せなことなのかもって、改めて気付かされた。



でも、本当は私が彼より先に起きて、朝の支度をしとかなきゃダメなんだろうけど。


甘えって怖いよね。


ホント、彼に甘えちゃっている自分が恥ずかしくなっちゃう。



これが未だ私が独身な理由なのかもしれないね。
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