プロポーズは突然に
コレクションのように相方不在の靴下がタンスの中で山積みとなり、まるで古代文明ピラミッドのような形で無法占拠している。


もういっそのこと失くすなら、位置情報でも付けとこうかな?っていう感じだけど、そもそも片方無いなら無いで捨てろよって感じだよね。



だけど、出てきた時のことを思うと捨てられないのだ。



どこで消えてしまったのか記憶を辿《たど》っても思い出せないから、我が家の七不思議の一つになるほど、私の空いた靴下の行方を知る者はいないのだ。



身支度をささっと済ませると、私はいつものように駆け足で、すぐ近くのバス停へと向かった。


なんだかんだ遅く起きたって、間に合っちゃうから、私のだらしなさは一生変わらないんだと思う。



停車中のバスに乗り込もうとすると、おじいちゃんが何やら大きな鞄を持ち上げるのに苦労していた。


人が目の前で困っているのに、誰も手伝う素振りを見せない。


それどころか見なかったふりして、追い抜いて乗車する人がいたから憤りを感じた。


私の性格上、ほっとくことなんてできやしない。


体が反応するかのように、私は一緒に鞄を持ち上げるのを手伝うと、おじいちゃんから深く感謝された。



正直、当然のことをしたまで。



ほぼ満員で埋まるバスの中を窮屈《きゅうくつ》そうにする私は、いつものようにバスに揺られながら職場へと向かった。
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