プロポーズは突然に
私が働いている仕事、それはホテルの清掃員。


ま、派遣なんだけど、やりがいのある仕事だと言っておこう。



ヒールを履いてコツコツと歩くOLに憧れていますなんて、歳を取るにつれて言いづらくなっちゃう。



今日も頑張りますかと辺りを見渡していると、近くの座席に座る主婦らしき人の鞄から財布を抜き出そうとしている中年男性を目撃してしまった。


これって、ひょっとしてスリだよね?


なんとかしてあげなきゃ……



正義感が私をソワソワと奮い立たせる。



正直、か弱い女の子(自称)に何ができるか分からないけど、見てないふりをするなんて私の良心が許せない。



思わず、私は持っていた鞄を大きく振り回し、どさくさに紛れて財布を抜き取ろうとしている男性の手に上手いこと当ててみせた。



「あっ!すいません」



しらこい顔でわざとだとバレないよう、演じてみせる私に女優の仕事は来ないのだろうか?



あとは、可愛く上手いこと丸めちゃえば完璧。



そう、思っていたんだけど……



あれ?
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