失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
 彼の顔が近づいてきて、思わず目を瞑ると、額に口づけられた。
 私は信じがたい思いで彼の言葉を聞いていた。

(好きになってって……)

 少なからず期待はしていた。
 あの頃と同じように、彼の目に好意以上の欲があることにも本当は気づいていた。

(本当に? 信じていいの?)

 私は貴一さんの頬に手を伸ばした。そっと触れると、気持ち良さげに彼の目が細まる。
 息が触れるほどに顔が近づき、まぶたや頬に口づけが落ちてくる。
 私はついねだるように顔の向きを変えて唇を近づけてしまう。

「口がいい?」

 口にしてほしい、などと言えるわけもなくて、頬を真っ赤に染めて口をぱくぱくと開けたり閉じたりしていると、薄く笑った彼がそんな私の唇をそっと塞いだ。

「ん……」

 唇が優しく触れて、啄むように口づけられた。
 互いの息遣いが徐々に激しくなっていく。唇を触れ合わせているだけなのに、そこから全身に熱が広がり、頭の芯が蕩けそうになる。

「んんっ……く、るし」

 触れるだけのキスは角度を変えながらずいぶんと長く続き、息苦しさを覚えて、閉じていた唇を開けると、ノックをするように彼の舌が唇の間に滑り込んでくる。

「はっ、まって……んっ、ちょ」

 密着した彼の身体を押すように腕を突っ張るが、キスは止まらなかった。

「無理だよ、どれだけ瑠衣がほしくて待ったと思ってるの?」
「はぁ……っ、ふ」

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