失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
 熱を持った舌で口腔を余すところなく舐められる。
 貴一さんの汗ばんだ手のひらが私のパジャマを捲り上げて、中へと入ってきた。恥ずかしさに身を捩ると、逃げ場を塞ぐように体重をかけられる。

「ふぁ……」

 彼の顔が私の首に埋まり、髪と息遣いが触れて、くすぐったい。

「瑠衣からいい匂いがする。同じシャンプーを使ってるのに、自分と違うって不思議」

 犬のようにくんくんと首筋を嗅がれると、そこにも何度も唇が押し当てられる。
 キスの心地好さにうっとりしている間にパジャマはすべて取り払われていた。

「好きな人と同じ部屋に住んでてさ、俺、よく耐えたと思わない?」
「好きな、人? 私?」
「そうだよ……瑠衣しかいないでしょ」

 あの頃、その言葉を待っていた。
 けれど彼からはなんの連絡もなく無視をされた。

(でも、もういい……今、好きだって言ってくれるなら)

 重ねた身体から、貴一さんの熱が伝わってきて、壊れそうなほど心臓が大きく跳ね上がった。私を欲しがってくれている。好きだと言ってくれている。
 泣きたいほどに嬉しくて、私は彼の背中に腕を回した。

「もっと、ぎゅってしていい?」

 私が頷くと、腕の力が強まった。
 苦しいくらいに抱き締められて、互いの境界線が服だけになる。

 抱き締め返したことを彼が喜んでいるのは一目瞭然だった。顔中にキスの雨が降り注ぎ、身体を弄る手のひらに余裕がなくなっていく。

「瑠衣……俺を好きだって言って」

 懇願するような言葉を贈られ、涙に濡れた目で見上げる。
 真っ直ぐに彼の目を見つめて、私は自分から唇を寄せていく。ちゅっと軽い水音が立ち、すぐに唇を離した。

「……好きですよ、とっくに」

 過去をなかったことにはできないけれど、今、貴一さんの気持ちは私にある。だから、もういい。今はただ、なにも考えずに彼の熱に流されてしまいたかった。
 私は身体から力を抜き、貴一さんの与えてくれる快感に身を任せたのだった。

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