失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
「覚えてますよね?」
「覚えて……? 待って、告白ってなんのこと?」
「なんのって」

 彼の答えに私は気色ばんだ。
 まさか本当に私の告白を覚えていないのか。

「私の告白を無視したことを、なかったことにしたいんですか?」
「違うっ、本当にわからないんだ。瑠衣はあの頃、俺に好意を持ってくれてたってこと?」

 どうしてそんな自信なさげに聞くのだろう。
 好きだと伝えたのだから、私の気持ちは知っているはずなのに。

「あのとき、好きですって送ったじゃないですか……っ」
「送った? どういうこと?」

 彼の表情は必死だった。
 うそや誤魔化しでこの場を乗り切ろうとしている雰囲気でもない。
 なにかがおかしい。互いにそう思ったのだろう。彼は記憶を擦り合わせるように額に手を当てて考え込む。

「私……貴一さんに、メッセージを送りました」
「……メッセージ?」

 貴一さんは、テーブルに置いたスマートフォンを引き寄せ、トーク画面から私とのやり取りを表示させた。

「十年前のメッセージが残ってるんですか?」
「うん、スマホは変えたけど、バックアップは取ってあるから。瑠衣の方にはないの?」
「誤ってスマホを水没させちゃったんです。バックアップ取らないと過去のメッセージが消えちゃうって知らなくて」
「瑠衣、そういうの弱かったもんね」

 スマートフォンの画面に私とのやり取りが表示される。彼はテーブルの上にスマートフォンを置いて、私にも見せてくれた。

「この辺が、十年前だね」

 意外にも早くやり取りが見つかったのは、私たちに空白の十年間があったからだろう。少し遡るだけで、当時の自分が送ったメッセージに辿り着く。

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