失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
「告白って、いつ?」
「えっと……たしか、夏休み明け……忙しいって言われて、一ヶ月くらい会えなかったときだから」
「十月頃?」
「たぶんそうだと思います」
「……この辺か。やっぱり……入ってないよ」

 ほら、とトーク画面を見せられて確認すると、私と貴一さんのやり取りは「また今度」という私からのスタンプで終わっていた。

「どうして?」
「わからない。考えられるとしたら、Wi-Fiの調子が悪かったとかかな? 送れなかったんじゃない?」
「違いますっ! だって既読になったの! だから、断られるか、受け入れてもらえるかドキドキしてずっと待ってて。いつメッセージが入るかわからなかったからスマホを手放せなくて……お風呂まで持ち込んじゃって、バスタブに落としたんです!」
「既読になった?」
「うそでしょ……入ってなかったなんて……」

 私の口から乾いた笑いが漏れた。
 告白を無視された、私は振られたんだと思い込んでいた。そもそも送ったメッセージが彼に届いていなかったなんて、思いもしなかったのだ。

 どんな運命のいたずらだと神様を憎まずにはいられない。

「ちゃんと、聞けばよかったんですね……どうして返事をくれないのって。既読になったのに返事がなかったから、もう私とは会うつもりもないんだって思って」
「あの店にも行かなくなった?」
「はい」

 私は頷いて貴一さんを見つめた。
 彼はどうだったのだろう。私が行かなくなったあと、あの店に行ったのだろうか。

「俺も、夏休み以降はちょっと忙しくて、あれから一度も足を運んでなかったんだ」

 貴一さんは疲れたようにため息をつき、肩を落とした。
 どちらのせいでもない。ただ、タイミングが悪かったのだとわかっていても、あのときこうだったらと後悔せずにはいられない。

「昔も今も、瑠衣が好きだよ。会えなくなって、後悔ばかりした」
「じゃあ、どうして会ってくれなかったんですか? 本当に忙しかっただけ?」
< 37 / 85 >

この作品をシェア

pagetop