失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
「そんなこと聞いたら、重くない?」

 私の言葉に拓実はふんっと鼻で笑った。

「十年好きな時点で重いわ、お互いな」
「……そりゃそうだけど」
「顔を合わせなくても十年気持ちが冷めなかったんなら、この先十年後、二十年後だって一緒にいられるだろ」

 彼は、なぜこんな簡単なことがわからないんだと言いたげに肩を竦めた。しかし、拓実の横顔はどこか寂しげに見える。おそらく気のせいだろうが。

「拓実にしては、まともなアドバイスだね」
「俺はいつもまともなことしか言わねぇぞ」
「昔は、散々遊ばれてるだの言ってたじゃない。あ、そういえばさ、私が決死の思いで送った告白メッセージ、貴一さんに届いてなかったみたい」

 私は手をポンと打って、拓実に言った。

 メッセージの謎はいまだに解けていない。
 貴一さんに送ったメッセージはたしかに既読になっていた。それなのに彼のもとには届いていないという。結局、私がスマートフォンを水没させてしまったため、原因を究明することもできやしない。

「……へぇ、そうだったのか」
「それだけっ!?」
「昔のことなんてどうでもいいだろ。今、お互い好き合ってるんだから。早く忘れろよ」
「え~だって気になるでしょ」
「俺は全然気にならない。そんなどうでもいい話より、昼飯になにを食うかだよ」

 拓実にそう言われると、なんだか途端に空腹を覚えてきて、私は腹をさすった。

 さすがに土曜日の大型ショッピングモールは非常に混雑しており、モール内のレストランは長蛇の列だった。
 食事にありつけたのは到着してから四十分後で、メニューに書かれたどの料理も美味しそうに見えるくらい空腹であった。

「どうしよう、食べ過ぎちゃいそう……ねぇ、二百グラムのステーキを食べる女ってヤバいと思う?」
「知らねぇよ、好きに食え」

 拓実が手を挙げると、すぐさま気づいた店員が近づいてきた。

「ニンニク……は、ちょっとやめておこ。私、大根おろしステーキとサラダセットにする。拓実は?」
「俺、ミックスグリルのセット」

 二人分の料理の注文を済ませて、店員にメニューを返すと、私は広くなったテーブルにショッピングモールの館内図を広げる。
< 47 / 85 >

この作品をシェア

pagetop