失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
 数ヶ月くらい前、お気に入りの下着が風に飛ばされてしまってから行方不明なのだ。
 風が強いからむしろ早く乾くだろうとベランダに出したのが間違いだった。
 仕事から帰って洗濯ものを取り込もうとベランダに出ると、ハンガーに掛けていたブラウスは、室外機の近くに丸まって落ちており、靴下や下着がいくつか飛ばされてなくなっていた。

 飛ばされたのは下着だし、近所の住民に発見されるのは恥ずかしい。
 そのためベランダの下からマンション周辺まで抜かりなく探したのだが、遠くまで飛ばされてしまったのか、結局、見つからなかったのだ。

(今頃見つかっても、もう履ける状態じゃないだろうけど)

 ランジェリーショップは向かいの店にある。
 貴一さんが一緒に来ていたら下着は買わなかっただろうが、相手は高校時代から親交のある拓実だ。気を使うような相手ではないから、声をかければこの辺りの店を見て待っていてくれるはずだ。

 私はワンピースの会計を先に済ませて、まだ服を見て回っている拓実に声をかけた。

「拓実、私、あっちの店見てきてもいい?」
「わかった。俺は俺で適当に見てるわ。合流するときに連絡して」
「うん、じゃあちょっと行ってくるね」

 ショップの紙袋を片手に店を出ると、向かいにあるランジェリーショップに向かった。
 サマーセールともあって、ブラジャーとショーツのセットが半額になっている。ブランドの下着はブラジャーとショーツのセットであってもセールじゃないと手が出ない。
 この機会に三セットくらい買って、古くなった下着は処分してしまおう。
 半額でもそれなりに高かったが、なるべく可愛いものを手に取ってしまうのは、見せたい人がいるからだ。考えてはにやつきそうになるのを空咳で誤魔化した。

「これ試着お願いします」
「かしこまりました。サイズの確認もいたしましょうか?」
「お願いします」

 私は店員の案内で試着室に入った。服を脱いでブラジャーをつけてから店員に声をかけると、カーテンをほんの少しだけ開けて店員が中に入ってくる。
 そうそう胸のサイズは変わらないと思うが、セールでも安くない買い物だ。自分にあったサイズの下着を買いたい。

「あ~これ、ワンサイズアップでもいいと思います。ほら、この辺りのお胸がはみ出してしまっているので」
「あ、そうですか。じゃあ、Cカップのでお願いします」
「ただいまお持ちしますね」

 試着室から店員が出ていった店員が、すぐに新しいサイズのブラジャーを持ってくる。店員にブラジャーをつけてもらうと、たしかに先ほどよりもぴったりと胸にフィットした。

「いかがですか?」
「ぴったりです。じゃあこれにします」
「ありがとうございます!」

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