失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
 そういえば、穿いていたパンツもややウェストがキツくなっていた。胸がワンサイズ大きくなるってことは、太ったのかもしれない。
 私は、胸が大きくなって嬉しいようなそうでもないような気持ちで会計を済ませた。

 店の外に出ると、ちょうど拓実も買い物が終わったところだったのか、外に出てくるところだった。

「次、どうする? 行きたいところあるか?」
「サンダルも見たいんだよね。拓実は?」
「俺は仕事用のワイシャツかな。店二階なんだよな。靴見てから付き合ってもらっていい?」
「うん、もちろん」

 いくつかの靴屋を回りながら、ワンピースに合うようなサンダルを探す。歩きやすいように低めのヒールで、なおかつデザインが可愛いものはないかと、次々に手に取った。

「珍しいな。そういうの仕事で履けないだろ? そういえば、ワンピースも買ってたし」
「あ~なんとなく?」

 こうして拓実と買い物に来るのも珍しくはない。
 私がいつも買うのは、仕事でもプライベートでも着られるような服が多く、まずスカートは選ばなかった。靴は夏でも冬でも走りやすいスニーカーオンリーであった。
 誰のために、誰の影響で選んだのか丸わかりで、それを長年の友人に指摘される恥ずかしさと言ったらない。

「へぇ~恋しちゃってんなぁ」

 拓実は多少の揶揄いを声にのせて言った。

「なによ、悪い?」
「いや、敵わないはずだと思って。今日着てるのも可愛いしな」

 私の格好を頭の先からつま先まで眺めた拓実は、感心したように頷いた。

「拓実に可愛いとか言われると、変な感じがするんですけど」
「どうせあの男は毎日のように言ってんだろ」
「な、なんでわかるの……っ」
「そりゃ、お前が見るからに女になったからだよ」

 そんなことを言われても、自分では実感が湧かない。
 ぺたぺたと頬に触れていると、悔しそうな顔をした拓実が手を私の顔に近づけてきた。

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