失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
(なに……っ!?)

 音を立てないように玄関に近づき、差出人もなにも書かれていない封筒を手に取った。勧誘のチラシかと思ったが、そういったものは一階のポストに入れられている。
 直接ドアポストに入れられるのは、共有スペースの清掃日時を知らせる管理人からのお知らせくらいだった。

 震える手で封のされていない封筒を空けると、中に入っていたのは普通の便箋だ。女性だったら選ばないであろう、白の紙に罫線が引いてあるだけの地味なものだ。
 中を開き、あまりの恐怖と驚きで紙が床にはらりと落ちた。

(今日は、いつもの男はいないんだね……って)

 貴一さんと一緒に暮らしているのを知っているのか。
 ここ最近あの男の姿を見なくなったと思ったのは、貴一さんがいなくなる機会を窺っていたのだろうか。そう思うとぞっとする。

 しかも、手紙には続きがあった。

 ──今日はいつもの男はいないんだね。プレゼントありがとう。でも、男友達がいっぱいいるみたいで嫉妬しちゃうな。僕以外の男と仲良くしないでほしい。

(プレゼントって……もしかして)

 先ほどまで洗濯ものを干していたベランダに視線を送る。
 なくなった私の下着。それを奪ったのはやはり例の男なのだろうか。

 窓を隔てた場所にその男がいたと思うと、気持ちが悪くてたまらない。
 私は慌てて寝室に駆け込み、遮光カーテンを隙間なく閉めた。

「はぁ……もうやだ……貴一さん、早く帰ってきて」

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