失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
 遮光カーテンの隙間から差し込む日射しで目を覚ます。
 枕元に置いた時計を見ると、まだ十時過ぎだが、休日にしてもいつもよりも起きるのがかなり遅い。

(寝たの、朝、四時だったもんね)

 隣で規則正しい寝息を立てる貴一さんを見つめていると、いつまでもこうしていたくなるが、今日はやることが山積みだ。
 それなのに、貴一さんの足が自分の太腿に触れていると、もっと近づきたくなって、足を絡ませてしまう。
 ふくらはぎを擦り合わせながら、布団に潜り込むように彼の懐に入り込む。私がそうしても、貴一さんはよほど深く寝入っているのか身動ぎ一つしなかった。

(そういえば、なにもしないで寝たの……初めてかも?)

 彼と恋人になり、一緒に寝るようになって、私たちは付き合いたてのカップルらしい付きあい方をしていた。
 一緒にいれば触れたくなるし、貴一さんもそう思ってくれているのが伝わってくる。
 ほとんど毎日抱きあい、顔を合わせればキスをした。愛しているし、愛されているのがわかる。だからか、昨夜はなにもなくてちょっと寂しいなと思う自分がいて驚いた。

(こんな風に寝るのも、今日で終わりかな)

 部屋を決めたら、私は簡単に荷物をまとめて実家に帰る予定だ。

 ますます起きたくなくなり、彼の匂いを自分に擦りつけるように胸元にぐりぐりと頭を寄せていると、頭上からくつくつと笑う声が聞こえてくる。

「る~い、どうしたの? 朝から甘えてる?」

 どうやら起こしてしまったらしい。申し訳ない気持ちもあるが、彼の腕が私を捕らえるように身体に回され、ますます身体が密着すると、いつだって気持ちが浮き立つ。

「……甘えてます」
「珍しいね。瑠衣から甘えてくれるのは」
「いつも、貴一さんが先にぎゅってしてくれるから」
「下心だらけだけどね。二人でいると、いつも触れたくなって困る」

 貴一さんの手が私のパジャマの内側に入り込んでくる。
 それが始まりの合図であるかのように私たちは唇を重ねた。

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