失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
「ん、んっ」

 熱い舌で口腔を舐め回されて、汗ばんだ手のひらが身体中を這い回っていく。頭の奥がじんと痺れるほどの心地好さに包まれると、足を開かれ一気に貫かれる。

「あっ、あぁっ」

 初めて身体を重ねたときに感じた痛みなど、とうにない。彼に抱かれれば、ただただ気持ち良くて、幸せで、満たされる。
 彼の吐きだしたものを受け止めて、私も同時に身体を震わせる。
 汗ばんだ身体を離す頃には昼を回っていた。

 互いに呼吸を整えつつ、啄むようなキスをしていると、なにかを思い出すように彼がぽつりと言った。

「俺……君のスーパーヒーローになりたかったんだよね」
「え?」

 突然なんの話だろうと目を丸くする私に、貴一さんはにっこりと微笑んだ。

「初めて会ったとき、憧れの警察官の話をしてたよね」
「初めてって、あの……まだ名前も知らないときですか?」
「そうそう。瑠衣は拓実くんと店に来ててさ、俺の斜め向かいに座ってた。きらきらした目で強盗から助けてくれた警察官の話をするから、聞くつもりはなかったのについ耳を傾けてしまってたんだ」
「え~あれ、聞いてたんですね……」

 恥ずかしいと目を伏せると、貴一さんのキスがまぶたに落ちてきた。

「あのときね、俺、ちょうど進路に悩んでたんだよね」
「進路? 国家公務員試験受けるって言ってましたよね?」
「うん、そうなんだけど」

 貴一さんは、当時を思い出すように懐かしそうに目を細めた。

「年収もそれなりだし安定してるって理由で官僚への道を選んだんだ。親もそれを望んでいたしね。でも、本当にそれでいいのかって、いつも思ってた」
「それでいいって?」

 私が首を傾げると、苦笑を返される。

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