失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
「今では、強盗のときに助けてくれた警察官の顔が、貴一さんに置き換わってるくらいですよ!」
「それも俺が助けたかったけどなぁ、残念」
「私が小一のときですから、貴一さんも小学生ですもんね」

 私たちは顔を見合わせて笑い合い、ようやく身体を起こした。

「そろそろ支度しないとね」
「ですね。あ……」
「うん? どうしたの?」
「いえ……プロポーズは嬉しいんですけど、私、ちょっと遠いところに引っ越そうと思ってて。籍を入れたらまた引っ越すことになりますか?」
「うん? 俺は最初から瑠衣と一緒に暮らすつもりで引っ越しの話をしてたよ?」
「えぇっ、そうだったんですかっ!?」

 離れて暮らすことを寂しいと思っているのは私だけかと思っていたのに。
 彼は私と恋人関係になってから、二人で暮らせる賃貸を探していたと言った。家族用の宿舎もあり、そちらに移るかどうかを含めて、私に選んでもらうつもりでいたようだ。

「どうして先に言ってくれなかったんですか? 寂しかったし、貴一さんにいつまでもこんな生活をさせるわけにはいかないってけっこう悩んだんですよ」

 私が唇を尖らせて言うと、貴一さんが苦笑を見せる。

「瑠衣がプロポーズを受けてくれるか、自信がなかったんだよ。もし瑠衣がいやだって言ったら、また強引に言いくるめて部屋に押しかけることも考えてた」
「あ、最初に強引だったって自覚はあるんですね」
「そりゃあるよ。俺以外の男をあんな風にほいほい家に入れたらだめだからね。一緒に暮らすなんて言語道断だよ」
「貴一さん以外の男の人を家に入れるわけないです」
「俺のことを好きだったからだって、思っていいの?」
「……好きな人が私を守ってくれるって言うんですよ。断れるわけ、ないじゃないですか」

 頬が熱い。
 あまりの恥ずかしさに目を背けると、顎を掴まれて貪るような口づけが贈られた。
 一度は起き上がったはずなのにふたたびベッドに押し倒されて、息も絶え絶えになるほど口腔を弄られる。

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