失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません

「もう~友だちだって言ってるのになぁ」

 勝手に当て馬にされた拓実には迷惑だろうが、彼の嫉妬は嬉しくもあった。それに、嫉妬していても、私が友人である拓実と会うのを制限することはない。
 そういうところも好きだと改めて思うだけだ。

 朝食をテーブルに並べ終えると、貴一さんが戻ってくる。

「朝食も美味しそうだね。ありがたいけど、疲れてるときは作らなくていいんだよ。瑠衣の負担にならないように」
「籍を入れるときに決めたでしょう? 貴一さんが家賃の大半を払うなら、私はその分、ご飯の用意をするって。それに掃除や洗濯は二人でやってるから、むしろ、貴一さんの負担の方が大きいと思う」
「いや、それはそうなんだけど、お弁当、毎日すごく手が込んでるからさ。朝から作るの大変じゃないかなって」

 手が込んでいると思ってくれるなら、私の手抜き料理もなかなかだと口元を緩めた。

「実はけっこう手抜きなの」
「そう? そうは見えないけど、負担になってないならいいよ」

 それなりに一人暮らしは長いし、短大を卒業してから愛小井幼稚園で働いているが、給料はなかなか上がらない。
 仕事柄、昼食を外に食べに行くことはできないし、コンビニで買ってから出勤するのもなかなか高くつく。
 結局、私は社会人一年目から毎日、弁当を作って行っていた。

 貴一さんは手が込んでいると言ってくれるが、実際はかなり手抜きだ。時間があるときに焼くだけの状態にして冷凍し、それを毎朝使っている。

(貴一さん、料理は苦手だもんね~)

 一緒に暮らして始めて、なんでも熟す貴一さんが実はけっこう不器用であると知った。
 料理を目分量で作ることができないから、なんでもかんでもきっちり量って時間がかかるため、自分では作らないらしい。
 それにやり方を知っていてもできないのが裁縫だと言う。

(手が大きいから、ボタン付けなんか難しいかもね)

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