失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
 結婚祝いと言いながらも、拓実が持っているのはどう見てもビニール袋。
 私はビニール袋を受け取り中を開けて噴きだした。

「めちゃくちゃいい肉」
「あははっ、肉じゃん!」

 私と拓実の声が被った。
 そのとき背後から覗き込むように貴一さんがビニール袋を見た。

「あぁ、それ肉だったんだ。ありがとう」
「イエイエ、ドウイタシマシテ」

 拓実の言葉が棒読みに聞こえるのは気のせいだろうか。

「今日はもうご飯作っちゃったから、これ使えないよ。私たちで食べていいの?」
「そりゃそうだろ。結婚祝いなんだから。つか夫婦茶碗とか箸とかよりいいだろ」
「あ~拓実、なんか変な柄とか選びそうだから、いやかも。高校の頃、トラ柄みたいなシャツを制服のブレザーの中に着てたよね? あれ、ずっとセンス悪いなって思ってた」
「それを言うなよ……」

 今になって過去のやんちゃっぷりを恥ずかしがっているらしい。
 たしかに今は黒髪短髪の好青年なイケメンにしか見えない。
 今と昔の写真を比べて、拓実を知らない人に見せても、金髪ピアスでブレザーの下にトラ柄を着ていた少年を拓実だと言い当てられる人はいないかもしれない。

「貴一さん、なに飲む? ビール?」
「うん、拓実くんは?」
「俺もビール」
「じゃあ、これ持っていって。先に飲んで食べてていいよ。私、ビールもうちょっと冷やしておくから」
「重いから俺がやるよ。瑠衣は座ってて」
「じゃあ二人で」

 えへへと笑って言うと、貴一さんに頬をくすぐるように撫でられた。
 私はリレーのように貴一さんからビールを受け取り冷蔵庫に入れていく。貴一さんと拓実で十本は飲まないだろうから、念のためワインなども冷やして冷蔵庫のドアを閉めた。

「じゃ、かんぱ~い」

 私がグラスを片手に音頭を取ると、貴一さんと拓実もグラスで乾杯をする。

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