失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
 二人の顔を交互に見ながら尋ねると、拓実が呆れた眼差しで目を細める。

「そこで〝なんで〟って言っちゃうんだもんなぁ。鈍すぎないか?」
「うん……さすがにちょっと同情する」

 なぜか二人共に呆れられて、私は訳がわからない。
 続けて貴一さんが口を開く。

「拓実君にそう聞いて、瑠衣が俺に懐いてくれてるのは、あくまでも勉強を教わるためだって思ったんだ。俺はその頃には君が好きだったから、離れた方がいいと判断した。あの店に行かなくなったのは、それが理由だよ」
「そんな……」

 拓実はどうして貴一さんにそんなうそをついたのだろう。私たちが交際していたなんて事実はない。友人だと思っていたのは私だけで、実は嫌われていたのだろうか。

(あ、でも……遊ばれてるんじゃないかって言ってたから、心配したのかも)

 よく知りもしない相手を私が信用しきっていることを、拓実は度々危ぶんでいた。遊んで捨てられるぞ、と何度言われたかわからない。
 私と交際しているとうそをついてでも貴一さんを遠ざけようとしたのは、それだけ心配してくれていたからだろう。

「で、だ。実は、もう一つ瑠衣に謝らないとならないことがある」

 拓実はそう言って、スマートフォンを取りだした。
 画像フォルダを開き、SNSのメッセージ画面をスクショしたものを表示させる。

「う、うそ……っ、な」

 私はそれを見て、今度こそ絶句した。ぱくぱくと魚のように口を開けて、真っ赤な顔で拓実に視線を向ける。

「お前の告白メッセージ、俺のところに届いてたんだ。お前さ、送り先、間違えてんだよ」

 拓実の告白には貴一さんも驚いたらしく、スマートフォンを覗き込んだまま固まっていた。そして、納得したように小さく頷く。
 つまり拓実は、私が貴一さんに送ったメッセージを確認して、間違えていることに気づきながらもなにも言わなかった、ということだ。

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