失恋したはずなのに、エリート警察官僚の再会執愛が止まりません
「なん、なんで……言ってくれれば」
「すぐに気づくと思ったんだ。告白間違えてるぞって指摘するのもいやだったし、ムカつくし。でも、お前が失恋したって思い込んで落ち込んでいるのを毎日見てて、早く言わないとと思ったんだけど……言い出せなかった。悪かった」
「私、送ったあとにお風呂にスマホ落としちゃって……メッセージの履歴が全部消えちゃったの」

 その話はもちろん拓実も知っているはずだ。告白した次の日、貴一さんに失恋した話とスマートフォンの話をしたのだから。
 彼は私を元気づけるためか、スマートフォンの機種はどれがいいだのと教えてくれた。

「知ってる。だから余計に、言わなきゃバレないはずだって、ずるい考えになった」
「どうして今、言う気になったの?」
「あ~、お前の旦那にさっき玄関で聞かれたんだよ。昔のことを瑠衣に話してもいいかって。黙ったままでいるのは心苦しいんだと。それで俺も、今さらだけどちゃんと謝ろうと思ったんだ。お前が貴一さんと再会したときには、俺ももう諦めがついていたからな」
「諦め?」
「それについては気にしなくていい。お前が許してくれるなら、これからも友人でいてくれるか?」

 いつもおちゃらけている拓実が真剣な表情で私を見る。
 その目の奧に切なさのようなものを感じて、私は掴めそうで掴めないその正体を探るのをやめた。
 それを知ってしまったら、拓実とはもう友だちでいられないような気がしたのだ。

「うん、もちろん。告白のメッセージが拓実に届いてたのは恥ずかしいミスだけど……そもそも私が諦めずにもう一度連絡してればよかったんだし。今はこうして貴一さんはそばにいてくれるしね」

 隣に座る貴一さんを見上げて言えば、彼からも温かい眼差しが返された。

「でも、すっきりした! メッセージの件はずっと気になってたからさ。話してくれてありがとう」
「いや、ずっと話せなくて悪かったな」
「だからもういいってば。ほら、ご飯食べよう。あ、ビール飲む?」

 私が聞くと、席を立ったのは貴一さんだった。

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